第18号 (2024.06.16発行)

第20回いらかぐみオフ会

2024.06.01〜02  長野県山ノ内町 渋温泉・金具屋 




渋温泉・金具屋 「斉月楼」の外観(夜の風景)
 
 「いらかぐみ」の第1回のオフ会は2003年、山口県の祝島での開催だった。この時はまだグループ名はなく、単にネットで意気投合した面々が集まったに過ぎなかった。
 しかしこの会のあと、今後も掲示板など情報交換する共有スペースがあったらということになり、いらかぐみというグループ名も決まった。
 翌年から、5月下旬又は6月上旬に定例オフ会を開催するのが恒例となった。開催するのは古い町並の中にある古い宿というところにこだわり、北海道と沖縄を除く全国各地でこれまで19回開催された。初回参加のメンバーは多くが入れ替わったが、これだけ継続できているのは定例オフ会でも旅館での宿泊と翌朝の探訪、後は予定の合うメンバーのみが同一行動するというスタンスで、拘束力の弱い会であることが逆に長続きしている要因ではと思う。
 


 
第1回:祝島(山口県)
 


第4回:伊根(京都府)


 
第14回:伊勢(三重県)
 


第17回:美濃(岐阜県)

 
第20回記念である今回は、実質私が主導権を持つ役回りであり、どこで開催するか年明け辺りから構想を練っていた。例年は素朴な元旅籠や鄙びた温泉宿のような所を好んで選んでおり、有名どころや高級な宿はメンバーの予算的な面も考慮しなるべく避けていた。しかし、節目の回はちょっと趣向を変えるのも良し、すこし宿をグレードアップするのはどうかとのことで可能性を探っていると、ふと6月はじめ、候補の一つ渋温泉・金具屋に空きがあるではないか。さすがに温泉街を代表する超有名な宿のこと、予定の3か月以上は前だったが週末は既に思うように予約できない様子で、当日(1日)のみ複数部屋が確保できる状況だったのである。ちょうど会について検討が始まっていた頃のこと、話を出すと他のメンバーも賛同の方向だったのでそれではと一気に金具屋での開催に梶を切ったというのが決定までの流れだった。

 




 今回は辰巳屋さんが体調の問題から残念ながら不参加となり、5名での実施となった。前日松本に泊られていた万訪さんとYasukoさん、下諏訪温泉に泊っていた私の3名は万訪さんの自家用車(新車)に便乗させてもらい、松本の市街地、戸倉・上山田温泉などを経由して16時過ぎに宿に向った。既に前日から渋温泉入りし動画撮影などに励まれていた太泉八雲さんが投宿しており出迎えを受けた。間もなくUranoさんも到着し一同揃った。
 旅館の宿泊棟は4棟あり、登録有形文化財となっている斉月楼は木造4階の格式ある佇まいを誇っている。我々が案内されたのは「神明の館」という比較的新しい建屋ではあったが、2部屋の内装は微妙に異なっており、茶室をかたどった小部屋などもある。温泉街に面した部屋なので、共同浴場「大湯」の佇まい、浴衣姿で歩く人々の姿を見おろすことができる。情報では各館を含め、同じ内装の客室は全くないとのことで、この点でもこだわりを感じる旅館である。
 案内されたのは「斉月楼」正面手前にある温泉街に面した部屋  




 
泊った「神明の館」の部屋 茶室調の次の間があった
 
 
 16時半には全員到着したものの、17時半から館内の見所を旅館の方から案内を受ける館内ツアーに参加することにしており、その前に一浴しておきたいとの思いもあって中々忙しい。というのも館内には二つの浴場と5つの貸切湯、露天風呂がありそれぞれ趣が異なるからだ。貸切湯は空いていれば鍵を掛けて自由に入れる形になっているが、お客の思いは同じようで、空いている所は少ない。私が偶然ご夫婦が出て来られるのを見て入れ違いで入った「斉月の湯」は、木船を模した浴槽に富士山のタイル画が見事で、暫し独泉を楽しんだ。他のメンバーもそれぞれ空いている貸切湯を見つけたり大浴場に向ったりして、思い思いの湯のひと時だったようだ。
夕食前に参加した「斉月楼」を中心とした館内ツアーは50名近くの参加者があり、やはりせっかく伝統的な旅館に泊るのだからその粋を見ておきたいとの思いがあるようだ。130畳もの広さを誇る大広間「飛天の間」の成り立ちをはじめ、階段や踊り場などの意匠などを見聞きしていると、格式の中に様々な遊び心が散りばめられているのを感じる。殊に、1階の廊下は軒を連ねる町並に見立て、天井が青く塗られているなど、こだわり抜いた姿勢がうかがえる。各所とも長年の使用と日々の丁寧な手入れにより、独特の光沢を帯びている。これは今再現せよと言われても絶対に無理なことだ。また二つとないものでもある。ここに泊れたというだけでも貴重な体験になると感じた。
 夕食はその「飛天の間」でいただくことになっている。立派な舞台もあり、劇場といっても良いような格式と規模で、ここは部屋食よりもこちらで頂く方がよい。折上げ天井は高く開放的で、またその精緻な造りも見事である。むろん、食事内容も地元産の食材を出来るだけ使い、土瓶蒸しをはじめ品数多くいずれも美味であり、また使用される食器類一つとっても見応えがあった。
 食後の「夜会」では、メンバーの近況のほか、メンバー内の連絡や伝達手段、また各メンバーがこれまで記録してきた町並や集落などの情報をデータベース化して、バックアップシステムそして後世に伝えられるものにできないかという提案など、20回記念らしい話題も出た。
 



 

 

大浴場・浪漫風呂 
 



 
貸切風呂 左:斉月の湯 右:子安の湯 




 
食事会場となった大広間 「飛天の間」
 

 

夕食とお品書き 
 

 

夕食後は温泉街の散策に


 翌朝は動画撮影のため4時台に活動開始の太泉八雲さんを筆頭に、これも恒例の食事前の散策を開始。渋温泉街は下流側の安代温泉と一体化し約700mほど旅館街が連なっており、中心部では二筋になりその付近に共同湯も散らばっている。中小規模の旅館も伝統的な構えで、例年のオフ会開催にふさわしい旅館も多そうだ。そんな中でやはり金具屋は別格と改めて思うところ。昨夜も斉月楼の夜景を撮影する外湯巡りの客が絶えなかった。
 いつもは朝食後時間を惜しむようにそれぞれ二日目の行動を始めるところ、今回はさすがもったいない気がする。私はせっかくだから宿向いの共同湯「大湯」に入り、各メンバーも館内を再度一通り巡ったりして名残惜しい気分に浸った。

 
今回節目の回を迎え、今後どのような方向に向うべきか。年1回のオフ会は今後も継続していきたいのはもちろんだが、歓談時にも出たように、これまで積み重ねてきた各人の記録は貴重なもので、これらを大切に管理しまた一般の人々にも興味を持ってもられるベースにできるのなら、我々もこれほど嬉しいことはない。
 20回も回を重ねれば私自身も、他のメンバーも年齢を重ねている。
 出来れば若手のメンバーが加わって、継承そして発展させていくことが出来れば良いなと、個人的には思うところだ。
 
 

 

早朝散策時の温泉街 


館内点描


 


 
 



 
 



 

−孫右衛門 記− 
 

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